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#2 神の塩

最近「神!」と若者がやたら言うのを耳にする。
村神様もそうなんだけど、「神回」とか「神すぎる」とか、やたら言う。
そんなにやたら神が降臨しまくったら、神々しすぎて気を遣うじゃないか。
と思いつつ、ついに私も言ってみたい気持ちにさせられた。
私の神は、なんと塩に宿っていた。
この塩、ポルトガルの「マリソル」という塩ブランドの「フロス・サリス」。
この「たかが塩」が私に「神」と言わせしめた。
いや別に神棚に上げたり料亭の門前に盛ってあったりする魔除けの塩じゃない。
もう神がかっているとしか言えないうまさなのである。
キラキラ輝く薄い結晶は、最初に塩田の表面に浮かび上がってきた初ものを、すばやく手作業で採集、
それらを自然の力で乾燥させ、そこからまた選び抜いた結晶を、手作業で特製陶器ポットに収めたんだそうだ。
シンプルだけど「それやるの大変!」てな作業の果てに、YOLOs経由私の元に届けられた。
なんというか海より深いご縁を一方的に感じている。
なにがうまいって、この塩、しょっぱくないのだ。
そう、塩辛さがない。むしろ甘いと感じるのは私だけなのだろうか。
あと、ミネラルたっぷり!とか言われなくても、口に含んだとたん「海が口の中に来た!」というくらいミネラル感がある。
いや、いくらなんでもおかしい。塩がこんなにうまいはずがない。
疑り深い私は、私以外の誰かがどう感じるか試してみることにした。この塩を、うちに遊びに来たフランス人の食通の友人に1杯の白ワインとともに出してみたのである。
「神の塩です。ちょっと舐めてみて」
という私の意味深な言葉に、彼は「?」となりながらも、言われた通りにひと舐め。
それでどういうリアクションだったかというと…
目に涙を浮かべて「オオ…」と天を仰ぎ感嘆の声をもらした。(参照:『神の雫』の遠峰一青)
塩を舐めて泣いたフランス人を私は生まれて初めて見たのだった。
(事実なれど多少表現を盛りました。塩だけに…)
 
フランス人を泣かせた塩を、私は贅沢にも朝食でゆで卵につけて食べている。
食べるたびに「やっぱ神だ」とつぶやかずにはいられない。